小児外科グループ
小児(外科)医療の砦となる
どんな症例も自分たちの都合で断らない
地域の小児科医とネットワークを構築する
こどもと共に歩む
こどもに優しい医療を提供する
ハンディを持ったこどもの成長を長くサポートする
グループの特徴
小児外科は小児期の外科的疾患を扱う部門です。当科では、島根県内唯一の小児外科専門施設として、手術が必要な小児患者を県内全域から受け入れており、体重が1000gに満たない出生直後の新生児から、高校生くらいのおとなに近いこどもまで、幅広く、診療を行っています。疾患によっては、成人・高齢者の方も診療しています。
専門領域は、小児外科疾患、小児泌尿器科疾患、新生児外科疾患、小児悪性疾患(小児がん)、障害児(者)外科疾患、です。
(1) 日帰り手術
2009年5月から、日帰り手術(宿泊のない手術)を導入しました。
2022年では、当科に手術のために入院した287人の内、159人(55%)が日帰り手術でした。病院から離れた地域から来院される患者さんの場合は、1泊2日入院とするか、だんだんハウス(利用料900円)(写真:だんだんハウスの個室内の様子)を利用した日帰り手術扱いとするか、ご家族の選択が可能です。
(2) こどもの心の準備の手助けをする支援(「プレパレーション」)
2歳半~10歳のこどもを対象に、絵本・動画・人形・模型を使いながらこどもに直接話をして、手術やその前後の処置に対する恐怖心を軽減させるよう、プレパレーションを行っています。2013年3月からは、日帰り手術を予定しているこどもを対象に、「手術室探検ツアー」(図:案内のパンフレット)を開始しました。実際に手術室の中に入り、手術台に横になったりマスクを当てたりしながら、手術室の中でのことを楽しく体験してもらうという企画です。
(3) 目立たない傷痕とやさしい創の管理法
一生残る傷跡に最大限の配慮をしています。できるだけ目立たない位置(下着等に隠れる位置)に、できるだけ小さい傷で実施しています。また、術後は、創の消毒、ガーゼ交換など創に対する家族の処置が不要で、ほとんどの手術で手術日当日から入浴を可能としています。また、抜糸は必要ありません。
(4) 小児の鏡視下手術
非常に小さな傷で、専用の細いカメラと器械を使って行う鏡視下手術(胸腔鏡下手術、腹腔鏡下手術)を、こどもにも積極的に行っています。学童の場合でも、主に直径が3mmの器械を使用します。これまで、急性虫垂炎や腸重積症、嘔吐を防止するための逆流防止手術、縦隔や腹腔内の腫瘤摘出、胆嚢や脾臓の摘出など、多くの疾患で行ってきました。生後30日までの新生児にも実施可能です。
(5)小児の泌尿器科疾患の診療
こどもの尿路(腎・尿管・膀胱・尿道)や生殖器(外性器、精巣、卵巣)の各種疾患に対し、専門的治療を積極的に行っています。代表的な疾患は、水腎症をきたす先天性疾患、尿路感染症を起こしやすい膀胱尿管逆流症、外性器異常としての尿道下裂、精巣の位置異常である停留精巣などです。膀胱尿管逆流症では、従来の手術療法でほぼ100%の治癒率ですが、切開しないで行う膀胱鏡下デフラックス注入手術も行っています。
(6)大学病院の外での小児外科専門外来
県下で広く、気軽に小児外科専門医の診療を受けられるよう、県内4カ所で、小児外科の専門外来を行っています。手術は大学病院で行いますが、術前の診察や術後のフォローは、原則、現地の病院で行います。
《県東部》
○松江赤十字病院(小児科)(松江市母衣町200):週1回(図❶)
○東部島根医療福祉センター(松江市東生馬町15-1):月1回
○島根県立中央病院(出雲市姫原4丁目 1番地1):月1回(図❸)
《県西部》
○西部島根医療福祉センター(江津市渡津町1926):月3回(図❷)
対象疾患
非常に多くの小児の外科的疾患を対象としています。鼠径ヘルニア、臍ヘルニアといった日常よく遭遇する疾患はもちろん、胆道閉鎖症、ヒルシュスプルング病、漏斗胸、小児がんといった、極めて専門性の高い疾患にも対応しています。
ただし、下図のような領域は対象外です。
頸部:甲状腺疾患、先天性嚢胞性疾患(甲状舌管嚢胞など)、耳前瘻、副耳、舌小帯短縮症 他
胸部:漏斗胸、気道疾患(含む気道異物)、肺疾患、横隔膜疾患、食道疾患、縦隔疾患 他
《漏斗胸手術》
当科では、1.5cmの長さの創で行っています。また、体にやさしいチタン製のプレートを使用しています。
腹部:腹壁疾患、各種ヘルニア、消化管疾患、肝胆膵脾疾患、小児固形腫瘍 他
《臍ヘルニアの治療》
テープ固定法を積極的に推進しています。また手術も多数行っています。
《女児鼠径ヘルニアの手術》
傷痕が残らない腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を実施しています。
尿路:腎・尿管・膀胱の各種先天性疾患、神経因性膀胱、二分脊椎に伴う膀胱直腸障害 他
《VUR(膀胱尿管逆流症)の治療》
お腹を切開しないで行うデフラックス注入手術を行っています。もちろん、従来の手術療法も行っています。
生殖器:外性器疾患、卵巣疾患、精巣疾患 他
肛門部その他 各種痔疾患、直腸脱、体表の疾患(リンパ管腫、血管腫) 他
検査方法
超音波検査での診断を多用するなど、苦痛・侵襲の少ない診療を心掛けています。多くは、小児外科医自ら検査を行っています。
こどもにとって苦痛を伴う検査は、CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト:子どもが安心して医療を受けられる心理社会的支援を提供する専門職)と協力しながら、できるだけ負担が小さくなるよう配慮しています。
- 超音波検査:表在、腹部を中心に、負担の少ない検査として多用しています。
- 造影検査:上部消化管造影検査、注腸造影検査、排尿時膀胱尿道造影検査、など
- 内視鏡検査:上部消化管内視鏡検査、気管支鏡検査、膀胱尿道腟鏡検査、など
- 機能検査:24時間食道pHモニタリング検査、直腸肛門内圧検査、など
- 生検(組織検査):経皮的針生検、切開生検、切除生検、など
- 放射線部検査:核医学検査(DMSA検査、MAG3利尿レノグラム検査)、CT・MRI検査など
「VCUG説明 小児外科」をダウンロードする(PDF:200kB)
「MAG3利尿レノグラム説明 小児外科」をダウンロードする(PDF:201kB)
「DMSA腎シンチ説明 小児外科」をダウンロードする(PDF:214kB)
「24時間㏗モニタリング説明 小児外科」をダウンロードする(PDF:225kB)
術式
【傷痕の残らない手術】
当科で行っている急性虫垂炎に対する単孔式腹腔鏡補助下虫垂切除術(図)は、傷痕が残らないことが最大の特徴です。以前は、傷痕の見えない(下着に隠れる)手術を実施していましたが、近年は、全例で傷痕の残らない手術を実施しています。
他に、新生児例を含めた女児の鼠径ヘルニアや、程度のひどくない膀脱尿管逆流症でも傷痕の残らない手術を行っています。
診療実績
2001年以降の、年間手術数の推移(図1)と、年間新生児手術数の推移(図2)を示します。
少子化の時代にあって、年間350例程度の手術数で推移するようになっています。
新生児手術では、年によって、疾患が偏ったり、数の増減が大きかったりしますが、新生児手術の特徴と言えると思います。
図1 年間手術数の推移
図2 年間新生児手術数の推移
スタッフ紹介
- 石橋 脩一(助教) 副診療科長
H24年卒
- 久守 孝司(特任講師)
S62年卒
- 真子 絢子(医科医員)
H21年卒
- 船橋 功匡(医科医員)
H29年卒