肝胆膵外科グループ

令和4年4月

 施設の概要

・日本肝胆膵外科学会高度技能専門医制度修練施設A

・腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術 承認施設

・腹腔鏡下膵体尾部腫瘍切除術および腹腔鏡下膵腫瘍核出術 承認施設

・腹腔鏡下肝切除術 承認施設

スタッフの資格

川畑康成: 肝胆膵外科学会高度技能指導医・消化器外科専門医・内視鏡外科技術認定医・
          肝臓指導医・胆道指導医

西  健: 外科専門医・外科指導医・消化器外科専門医

岸  隆日本外科学会専門医

中村光佑: 外科修練医

肝胆膵外科の特徴

当院の肝胆膵外科の専門分野は腫瘍外科と内視鏡外科です。

腫瘍外科では、悪性疾患に対して外科手術を中心に治療を行います。

対象疾患は、肝臓悪性腫瘍(肝臓がん、肝内胆管がん、転移性肝がん)・胆道悪性腫瘍(肝門部胆管がん、遠位胆管がん・・胆嚢がん・十二指腸乳頭部がん)・膵臓悪性腫瘍(膵臓がん・神経内分泌腫瘍・IPMN)に対する拡大根治切除を得意としています。

内視鏡外科では、腹腔鏡を用いて手術を行います。

対象疾患は、良性疾患(胆石症、急性胆のう炎、肝嚢胞、血小板減少性紫斑病や脾腫など)、早期がん(肝臓がん・転移性肝腫瘍・膵体尾部癌)や低悪性度腫瘍(IPMN・膵神経内分泌腫瘍)であり、低侵襲手術を安全に行います。

さらに、当科で肝切除術・膵切除術の新しい手術術式を開発し、この手技は最新の手術法として海外論文にも多数掲載されており、国際的にも高い評価を受けています。

さらに、当教室の肝胆膵外科部門は、山陰唯一の日本肝胆膵外科学会高度技能専門医制度修練施設A

(http://www.jshbps.jp/modules/hightec/index.php?content_id=16)を取得している施設であり、高度に進行した症例で治療困難と他施設で判断された症例にも、高難度な手術手技を用いて根治切除が可能です。

肝臓・胆道・膵臓専門医スタッフが常駐し、より高度で安全な外科治療の実践が可能となる体制が整えられています。毎週金曜日の午後はスタッフカンファレンスを行い、第1・3火曜日午後からは消化器内科・放射線科・病理・肝胆膵外科による合同カンファレンスを主催し、肝胆膵の難治性疾患に対してチーム医療で立ち向かいます。

さらに、低侵襲な腹腔鏡下手術には日本内視鏡外科学会認定の技術認定医が対応し、腹腔鏡下肝切除術・膵切除術も認定施設として、安全に手術が受けられる体制を整えています。

肝臓外科

対象疾患:原発性肝がん(肝細胞癌・胆管細胞癌)、転移性肝がん、巨大肝血管腫など

従来は切除不能と診断された肝予備能不良な肝細胞癌に対しても、高難度肝臓外科手術である段階的肝切除術のための肝臓分割と門脈結紮・塞栓術(アルプス手術, ALPPS:Associating Liver Partition and Portal vein embolization for Stagedhepatectomy)を院内医療安全委員会承認のもとで開始し,良好な術後成績を収めています (図1~3)。また、ほとんどの肝葉切除(右葉切除・左葉切除など)は無輸血で行われています。

図 1 肝右葉を占拠する巨大肝細胞癌(アルコール性慢性肝炎  ICG-R15=21.6%)


図 2 カントリー線での肝離断(ALPPS-1)後、機能的残肝容積は47.5%に増大


図 3 カントリー線での肝離断終了時(ALPPS-1)(A)と、肝右葉切除後(ALPPS-2)(B)



県下唯一の腹腔鏡下肝切除術の認定施設として、早期肝臓がんや転移性肝がんに対しては、腹腔鏡下での肝切除を行っています(図4)。

図 4 転移性肝がん(大腸癌、S7転移)に対する完全腹腔鏡下肝後区域切除術


胆道外科

対象疾患:肝門部胆管がん、胆嚢がん、遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がん、胆石症など

腹腔鏡下胆のう摘出術から肝膵同時切除まで幅広く対応しています。

肝門部胆管癌に対しては、放射線科と協力して術後の肝不全予防目的で、術前門脈塞栓術(肝再生肥大を目的に切除側の肝臓門脈枝をコイル塞栓する方法)を行った後、安全な肝切除を行っています(図5)。

図 5  経回結腸静脈門脈塞栓術(術中)              門脈右枝の塞栓術


従来は肝臓を脱転しながら肝切除(右葉切除や左葉切除)を行っていましたが、これにより腫瘍のもみ出しや細菌毒素の拡散が引き起こされ、術後肝不全の一因となっていました。われわれは、この問題を解決すべく、肝臓を脱転することなく肝葉切除と出血量減少を達成する新しい術式を考案し実践しています(図5a,b)(Kawabata Y et al. J Surgical Oncology 2017)。

図 5a Liver paremchyma transection-first approach(右葉+尾状葉全切除)

図 5b Liver paremchyma transection-first approach(左葉+尾状葉全切除)

さらに、遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんに対しては、出血量を減少させ、リンパ節を含む癌を一括で切除する系統的腸間膜切除法(total meso-pancreatoduoenum excision)を考案し、良好な手術成績と良好な癌予後を達成しています(図6)(Kawabata Y et al. Langenbeck Arch Surgery 2016)。

図 6 胆道癌に対する系統的腸間膜切除術



良性疾患の胆嚢結石症に対しては、従来の4孔式の腹腔鏡手術から              
reduced port surgery(減孔式)を導入し、よりおなかのキズを
減らすことで患者さんの負担を少なくする手術を行っています(図7)。




             図 7 Reduced port surgeryによる
                腹腔鏡下胆のう摘出術
               (臍部の創のみで手術を行う方法)






 膵臓外科

対象疾患:膵管がん、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵神経内分泌腫瘍(P-NET)、膵嚢胞性腫瘍、慢性膵炎など


毎週火曜日午後2時から膵疾患特殊外来を開設して、膵臓疾患に悩む患者さんの診察にあたっています(図8)。

図 8 島大病院ニュース vol.37 2016.11 掲載


膵臓がんに対しては、膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術、および膵体尾部がんに対する膵体尾部切除を動脈先行処理(これをartery-firstアプローチ法と呼びます)を行う手術法を考案・実践することで、腫瘍遺残(がんの取り残し)のない切除と出血量の減少を両立させ、良好な術後成績を達成しています(図9,10)(Kawabata Y et al. Eur J Surg Oncol 2012&2016, J Am Coll Surg 2016)。

図9 膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除後成績 (2006~2017)                       

図10 膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除後成績 (2006~2017)




また、保険収載となった膵悪性腫瘍に対する腹腔鏡下尾側膵切除術(K-702-2)もSMA-first approachで行うlaparoscopic radical antegrade modular pancreatosplemectomy with SMA-first approach(Lap-aRAMPS)を考案実践しています(図11)。

図11 SMA-first approachにて脾動脈根部を剥離同定taping 



さらに、新しい膵癌の治療法を確立するために、日本国内有数の膵臓外科施設と共同で多数の臨床試験(膵全摘術に対する前向きコホート試験・切除不能膵癌に対する膵切除術・mesenteric approachによる膵頭十二指腸切除術・腹膜転移膵癌に対する腹腔内PTX投与治療、など)に参加しています。

                                   (文責:川畑康成)

12690